1位中国、2位スペイン、3位日本
高速鉄道の事故で問われる安全対策

 スペインの高速鉄道は、1992年にマドリードからセビリア間で開業。以降、バルセロナ(2008年開通)、バレンシア(2010年開通)など各地へ路線網を広げた。2013年にはフランス国境に達し、フランス高速鉄道(TGV)との相互直通運転も始めた。

 その総距離は、高速鉄道(最高速度250km以上)線だけでも約3192km、在来線の高速化区間などを含めると約4000kmに達する。欧州では最長を誇り、世界的に見ても中国に次ぐ2位だ。ちなみに日本の新幹線は、フル規格に在来線の改良区間なども加えると総延長は約3242kmで中国、スペインに続く。

 一方で、規模拡大に対して「安全投資が不十分ではないか」という指摘が相次いでいる。一部報道によると、スペイン高速鉄道のインフラを保有する国営アディフ社は、2025年の新線建設で20億7220万ユーロ(約3820億円)投じたが、設備更新には2億9010万ユーロ(約534億円)しか投じていないという。(※1)

 1992年の開業から30年以上が経過した今、初期設備に老朽化の懸念が出ている。設備更新費に充てる予算が少ないことは、運行の安全性に対して大きな懸念をもたらすと言えるだろう。

 また、人的ミスから守るための安全設備の不足も指摘されてきた。2013年に北西部で起きた事故の、直接の原因は運転手が指令部と携帯電話でやり取りし、気が取られたことだった。ただし、速度制限が時速80kmの急カーブに対して時速190kmで突っ込んだ状況から「なぜ自動ブレーキシステムが搭載されていないのか」という点もクローズアップされた。

 このように、過去の重大事故でも課題は散々指摘されていた。にもかかわらず、今年1月、そして10月と大惨事が起きた。相次ぐ事故にスペイン国内では批判が殺到。首都マドリードでは「首相退陣」を訴えるデモが起きるなど政治的混乱にもつながっている。

 スペイン高速鉄道における懸念点は、これだけではない。後編『日本の新幹線の4分の1で建設も、利用実績は9分の1…「スペイン高速鉄道」が抱える“深刻な問題”』では、スペイン高速鉄道が抱える構造問題について詳しく考察する。

(※1参考文献)
『スペイン高速列車「脱線衝突事故」調査で深まる闇 日本の新幹線上回る路線網の「鉄道大国」、不正隠蔽か』(2026年6月20日、東洋経済オンライン)