写真はイメージです Photo:PIXTA
2022年に始まったインフレ自体を、経済学者の筆者は異次元緩和の直接の効果とはみていない。だが、その「負の遺産」が金融引き締めを難しくし、日本に長い正常化の道のりを残したと指摘する。※本稿は、伊藤 修『日本経済はなぜ沈下したのか 「正しさ」が招いた35年の停滞』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
異次元緩和はなぜ始まった
2年でデフレ脱却を掲げる
経済停滞の中にあって、金融政策に対しては客観的にみて過大な役割が求められ、日銀は金融緩和が足りないと批判された。その主張は「リフレ派」と呼ばれ、政治的には安倍元首相はじめ保守派に支持された。
2013年、アベノミクスの「第1の矢」として黒田東彦総裁による異次元緩和が開始され、2年で「デフレ脱却」(インフレ率2%)達成を公約した。国民がこれを信じて期待インフレ率が上昇することに賭ける戦法だったから、政策は異次元すなわち常識外に大胆である必要があり、相当の副作用がありうることも当初から予想された。
この間、緩和的な金融政策が必要なこと自体に反対する人はほとんどいなかっただろう。またリフレ派の主張、日銀批判が、緩和政策へ日銀の背中を押す役目を果たしたことは認められると思う。
しかし、大胆な金融緩和→デフレ脱却→経済好調という道筋の考え方、またそれにもとづく政策の大胆さの程度については、常に異論があった。特に専門の金融学界では異論が強く、支持は少なかった。







