国内シェア7割の高所作業車 写真提供:アイチコーポレーション
高所作業車で国内シェアの約7割を握るアイチコーポレーションに伊藤忠商事が約300億円を投じ、議決権33.4%を掌握した。TOPIX改革に伴う移行措置銘柄入りで指数除外リスクがささやかれる中、伊藤忠はなぜ大株主として踏み込んだのか。その先に連結子会社化はあるのか。長期連載『クローズアップ商社』の本稿で、アイチとの協業で新たな収益基盤を狙う伊藤忠の戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
親子上場解消で一致した3社の思惑
国内シェア7割に残る「売った後」の収益機会
提携の発端は、豊田自動織機とアイチコーポレーションの親子上場問題にあった。豊田自動織機はアイチ株の過半を保有していたが、投資ファンドから親子上場の解消を求められていた。アイチ自身も、その関係を解消すべきだと考え、新たなパートナーを模索していた。
そうした中、豊田自動織機から打診が入る。「伊藤忠商事からアイチ株を一部譲り受けたいとの話が出ているが、アイチとしてはどう考えるか」。アイチの経営企画部・経理部担当理事である渕元厚氏は、「伊藤忠であれば、海外展開を加速させる上で非常に良いパートナーになる。株を売っていただくなら、ぜひ伊藤忠にお願いしたい」と応じ、3社の思惑が合意に至ったという。
伊藤忠はこれまでも日立建機やカワサキモータースなど、機械・モビリティー領域で資本提携を広げてきた。ただし今回の事業モデルの直接の源流は、いすゞ自動車との長年の取り組みにある。いすゞリーシングサービスといすゞユーマックスを通じて培った、商用トラックのリースや中古車流通の知見を、高所作業車をはじめとする特装車領域へ水平展開する構想を描いていたのだ。
アイチには電力・通信インフラを支える安定した需要と、強固な顧客基盤がある。一方、事業の大半は国内の新車販売に偏り、金融や中古車流通といった周辺領域は未開拓だった。伊藤忠の商社機能を提供しやすい相手だったのだ。出資後、リース、中古車、海外事業の協業が具体化すると、評価はさらに高まった。
「机上の構想ではなく、これはやれるという確信に変わった」。伊藤忠いすゞモビリティ部国内事業課長の鄒鏑(しゅう・てき)氏は、追加出資の理由をそう説明する。最初の出資から約半年で、次の投資の検討に入ったという。国内7割を握るトップメーカーであっても、取り切れていなかった収益機会がある。伊藤忠が見いだしたのは、車両を販売した後の生涯収益(ライフサイクルマージン)と、海外市場で眠る潜在需要だった。その勝ち筋は、アイチが半世紀以上かけて築いた顧客との関係にある。
次ページで中古車の売れ方まで変えた協業の舞台裏と、伊藤忠がアイチの先に見据える特装車市場への次の戦略を探る。







