高市“高圧政策”は潜在成長率を上げられるか、日銀「利上げシナリオ」狂わせるインフレ加速懸念衆院予算委員会で答弁する日本銀行の植田和男総裁(手前左)=10月13日、国会内 Photo:JIJI

「責任ある積極財政」、実態は高圧経済政策
労働生産性を上げられるかは「大きな実験」

 高市早苗首相は臨時国会の所信表明演説で、「『責任ある積極財政』により、国内投資を引き出し、日本の潜在成長率を引き上げ、良質な雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税収が自然増に向かう、GDP拡大の下での好循環を実現します」と意欲十分に語った。

 その積極財政路線を不安視して長期金利が上昇、米国からも懸念が表明される中で、このところは「リフレ政策ではない」ことを強調するようになっていたが、所信表明演説の趣旨は「税収が自然増に向かう強い経済を構築する。そのための『責任ある積極財政』」とうたった今年2月の施政方針演説と変わっていない。

 やろうとしていることは、積極財政や金融緩和で超過需要状態を作り出し経済を拡大させようとする高圧経済政策の性格を帯びる。もっと言うと、インフレ下での高圧経済政策といえる。

 高市政権が、成長戦略の核と位置付ける、戦略17分野に対する官民による「危機管理・成長投資」は、供給力の強化によって、潜在成長率を引き上げ、「強い経済」実現を目指すとしている。

 少子化で生産年齢人口が減り続けている日本にとって潜在成長率の引き上げは積年の課題であり、長い経済停滞から脱却するために必要なことだと多くの論者が指摘してきた。筆者もそのうちの一人だ。

 だが、内閣府の統計によると、アベノミクスが始まった2013年当時で1.0%だった日本の潜在成長率は、26年には0.5%にまで落ちている。これが果たして積極財政によって上がるのかどうか、「大きな実験」のように映る。

 潜在成長率引き上げのためには、まずは労働生産性の引き上げが不可欠だ。それが高圧的な経済を作り出すことによって実現できるのかどうかだ。

 仮にその方向に向かうとしても、実際に日本経済の供給力が上がるまで時間がかかると考えるのが自然だ。その間にインフレ高進という副作用が顕在化しかねない。

 インフレ加速となれば、基調的な物価上昇率がようやく「2%物価安定目標」に到達、今後はその「定着」と、政策金利を中立金利に着地させるかが、新たな課題となった日本銀行の利上げシナリオにも悪影響が出る可能性がある。