ルイ・メナンド氏のオフィスにある本棚。長編の何冊かは学生たちの課題図書だ。PAMELA PAUL/WSJ
人文学の分野や過酷な課題、そしてハーバード大学の教育の価値そのものが深刻な危機にあると捉えている人は、同大の「Humanities 10(人文学基礎講座)」で起きている現象に希望を見いだせるかもしれない。
10月のある火曜日の朝、哲学教授のサマンサ・マザーン氏はホワイトボードに書き込みながら歩き回り、ジェーン・オースティンの長編小説「エマ」の哲学的基盤を説明し、アダム・スミスやイマヌエル・カントの話へと脱線していった。
マザーン氏は講義会場のボイルストン・ホールに集まった90人の学生に大きな問いを投げかけた。「なぜオースティンはこれほど好感の持てないヒロインを創造したのか」。「そもそもなぜ小説を読むのか」。そして75分間の講義の終わりに、こう締めくくった。「エマは将来どうなるのか――そしてあなたたちの将来は?」
学生たちは拍手喝采した。
小説「エマ」と講義用の資料を持つサマンサ・マザーン氏PHOTO: PAMELA PAUL/WSJ
通称「Hum10(ハムテン)」として知られるこの授業は、ハーバードの履修科目の中で意外なヒットとなり、キャンパスのちょっとした名物となっている。ソーシャルメディア上で講義内容を語り合う「Hum Alums(Hum10同窓生)」たちの口コミもあり、この科目の履修需要は急増している。今秋の応募者数(小論文の提出が必須)は40%急増し、定員90人に対して180人の新入生が殺到した。
この熱狂ぶりは、教授陣でさえ説明に苦慮しているほどだ。
この授業は、成績評価点平均(GPA)の水増しには明らかに向かない。学生は週に1冊、分厚い本を読み、定期的に小論文を書かなければならない。単位の合否判定だけで評価してもらう(パス/フェイルの)選択肢はない(訳注:履修科目によっては、最低基準さえ満たせば「合格」として評価され、成績に影響を及ぼさない選択肢が用意されているものもある)。電子機器は禁止で、すべての講義で出欠が取られる(遅刻者にはピンク色の遅刻切符が渡される)。







