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かつて祖業のフィルムやカメラに依存していた富士フイルムホールディングス(HD)は、積極的なM&Aなどを通じて医療機器や複合機、半導体材料に業容を広げることで成長を続けてきた。2025年度には売上高、営業利益、純利益が過去最高を更新した。事業構造改革の成果を出した同社は今年8月、全社売上高の約35%を占める複合機事業のスピンオフの検討開始を発表し、業界関係者に衝撃を与えた。他事業への投資のためのキャッシュを捻出してきた複合機事業を手放すことによるダメージはないのか。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、富士フイルムHDの樋口昌之CFO(最高財務責任者)を直撃し、複合機事業分離の真意や手元キャッシュの持ち方、重視するKPI(重要業績評価指標)などを語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
売上高・営業利益は中計目標を達成
FCFは目標未達でも「オントラック」
――2026年3月期に売上高、営業利益、純利益が過去最高を更新しました。27年3月期も好調で、この三つの指標全てで中期経営計画目標の達成が見込まれます。一方で、事業買収を除く調整フリー・キャッシュフロー(FCF)は26年3月期にマイナス1423億円で、プラスマイナスゼロを見込んでいた中計に対しては未達となっています。
今期までの中計は、バイオCDMO(医薬品の開発・製造受託)に集中的に投資する期間と位置付けています。昨年度までのFCFは赤字で、中計の3年目である今期にFCFを黒字化する計画です。
バイオCDMOを含むヘルスケアセグメントの設備投資額は、25年3月期の4659億円がピークで、26年3月期に4447億円、27年3月期見通しは2480億円と減ってきました。バイオCDMOは収益貢献ができつつありますし、3年間で捉えるとオントラック(順調)です。
――過去には、旧富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)の100%子会社化や、日立製作所の画像診断事業などの大型買収を行っています。設備投資の減少で浮いたキャッシュを大型のM&Aに充てる考えはありますか。
オポチュニティ(機会)次第なので、絶対にないとまでは言えませんが、今M&Aで外から買わなければいけないものがある状況ではありません。複数の事業で自前のノウハウをグローバル展開していく段階です。
例えばこれまで重点投資してきたバイオCDMOは、自分たちで確立した生産プロセスをグローバルの拠点に横展開するフェーズに入っていて、これは外から会社を買ってきても実現できないのです。
メディカル(医療機器)でも、現在はソフトウエアの自社開発に注力しているので、大型のM&Aを必要としていません。
――今年8月に、富士フイルムビジネスイノベーションの上場を前提としたパーシャル・スピンオフを含む戦略的選択肢の検討開始を発表しました。安定的な収益を得られ、他事業への投資のためのキャッシュを生み出す複合機事業を手放すのは、経営戦略上影響が大きいのではないですか。
次ページでは、樋口CFOが複合機事業のスピンオフ検討の真意を明かすとともに、キャッシュの持ち方についても語る。富士フイルムHDは26年3月期に連結売上高が3兆3570億円に達したが、現金および現金同等物はわずか1706億円にとどまる。実は手元キャッシュの抑制には、樋口CFOが最も重視するKPI(重要業績評価指標)が関係している。







