豊田氏によれば、もともとのトヨタは、モノや客、市場にいちばん近い人に発言権がある会社だった。それがいつの間にか、肩書きのある人の意見を聞く会社になっていた。だから上の人には、肩書きを「役割」として使ってほしいという。
豊田氏は経営層の仕事についても語っている。人がやったことでも責任を取る立場であり、何でも自分でやるのではなく、場を用意して「仕事をしている意味や意義を持たせること」だという。「専門職が報われずに、肩書きを付けた人たちだけが偉そうなのはどうなのかと思います」とも言った。肩書きが一番上の自分が言うのはおかしいかもしれないが、と断りを入れながらである。
この見直しで、執行役員の小林耕士と河合満の名刺には、「副社長」の肩書が消え、それぞれ「番頭」「おやじ」という役割が記された。担うべき役割を名刺に示したわけだ。
肩書きではなく
役割で仕事をする会社に
トヨタ自動車の豊田章男会長 Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages
同じインタビューで豊田氏は、社長を11年務めた64歳の自分に意見する人が、だんだん減ってきたとも明かしている。「聞くよ」と言っても、相手から見れば年も肩書きも経験も上。呼びかけたくらいでは、その差は埋まらない。
部下が黙っているのを見て、考えがないのだと片づける上司は多い。豊田氏は、部下を黙らせているのは自分の立場の高さかもしれないと疑った。
上司は意見を受け入れるつもりでも、部下にはそう見えていない。会議の回数を増やしても、この食い違いは解けない。部下が口を開いたあと、その中身をどう扱うか。上司の本気は、そこで初めて伝わる。
2024年の講演では、さらに踏み込んでいる。役員を14人まで減らし、顧問や相談役をゼロにした狙いは、肩書きではなく役割で仕事をする会社に変えることだった。肩書きは序列を生み、それが行き過ぎると、社内はトップの言葉を待つばかりになって自律性を失う、と。
孫正義と柳井正が白熱対談
「潰れる会社」の特徴とは?
孫氏も、ほとんど同じことを口にしている。2007年刊の『成功はゴミ箱の中に』に収められた柳井正氏との対談で、こう語った。







