生保で疑義が続出 保険代理店の社保逃れ 損保は対岸の火事か

保険代理店の「社保逃れ」に、金融庁と厚生労働省が監視の目を強めている。生命保険業界が実態に踏み込んだ調査を進める一方、損害保険業界の動きは鈍い。連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、法令を守る代理店ほど不利になる「正直者がばかを見る」構造を問う。(元金融庁監督局特別検査官 成島康宏)

金融庁と厚労省が「社保逃れ」の監視を強化
生保と損保で対応に「温度差」

 2026年10月28日の日本経済新聞で、金融庁と厚生労働省が保険代理店の「社保逃れ」の是正に向け、業界団体への周知や監視を一段と強めると報じられた。社保逃れとは、本来は会社と従業員が折半で負担すべき健康保険や厚生年金などの社会保険料を、給与の払い方を操作するなどして不当に減らすことだ。

 保険代理店の世界では、こうした社会保険の負担逃れ(社保潜脱)と並んで、「再委託」も問題になっている。保険会社から販売を委託された代理店が、その販売を別の会社や個人にさらに委託することであり、保険業法で原則として禁じられている。

 こうした中、生命保険業界では実態に踏み込んだ調査が進む一方、損害保険業界では重点課題として十分に取り上げられていない。両業界には温度差があるといえる。

 だが、生保と損保の両方を販売する生損保兼営の大型乗り合い代理店では、運営体制が共通している。不適切な仕組みが放置されれば、法令を順守する代理店が競争上不利になりかねない。これは保険募集の適法性のみならず、代理店市場の公正な競争を揺るがす重大な問題である。

 次ページでは、生命保険協会による調査の中身と、損保業界の対応が遅れる背景を明らかにする。さらに、代理店経営者や募集人、保険会社が負う責任にも踏み込んでいく。