送金も証券売買も24時間365日、「金融のトークン化」が変えるお金の流れと新たなリスクPhoto:PIXTA

預金や証券をブロックチェーン上で扱う「金融のトークン化」が世界で進む。送金や資産売買の自動化は、事務負担や取引相手の不履行リスクを減らす一方、資金負担の増大や市場混乱の加速を招く恐れもある。日本でも実証実験が進むなか、求められるのは速さを統御する力だ。国内外の取り組みから、その可能性と課題を考える。(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー 大槻奈那)

企業の資金管理から中央銀行の決済まで
世界で広がる金融のトークン化

 送金も資産の売買も、24時間365日動き続ける。そんなシームレスな金融を実現しうる「金融のトークン化」の動きが本格化しつつある。

 トークン化とは、株式や債券、預金などの権利をブロックチェーンなどの共有台帳上で表し、移転や支払いを連動させる仕組みである。

 米国では、既にJPモルガンなどがトークン化預金を実用化している。例えば、世界最大級の産業機械メーカー・シーメンス社に対し、ブロックチェーン預金口座を使って資金を移転するサービスを提供している。

 これによりシーメンスは、あらかじめ設定したルールに基づいて、資金の配分、グループ会社への資金供給、余剰資金の集中管理などを自動的に行うことが可能になった。担当者による個別の送金指示は必要としない。

 その他の地域でもさまざまな動きがみられる。ユーロ圏では今年9月、トークン化資産のホールセール取引を中央銀行マネーで決済する「ポンテス」が稼働した。シンガポール政府は、官民でトークン化システムの商用化を推進しトークン化した中央銀行発行の短期証券をデジタル通貨(中銀デジタル通貨、CBDC)で決済する試みを9月から開始した。香港では、民間銀行のトークン化預金やデジタル資産を使って取引・決済を行う検証が進んでいる。

 では、日本におけるトークン化の動きはどうなっているのだろうか。次ページでは国内における取り組みを取り上げるとともに、金融のトークン化の課題、メリット、デメリットを検証する。